高齢者レクリエーションの目的はQOLの向上
一般的に高齢者レクリエーションの目的と言えば、
- 心身の健康を維持する
- 脳の活性化
- QOLの向上
と言われます
要は、『お年寄りを元気にしておくため』
と、言い換えても良いでしょう
でも、これは本当に正しいのでしょうか?
私のような介護士の視点からすれば正しいでしょう
お年寄りが元気でいてくれれば、
介助が楽になるし、
こっちの気分もいいし、
おまけに、最近は利用者(お客さん)の要介護度を維持したり下げると補助金が出るところもあるのです
万々歳と言っても良いでしょう
しかし、高齢者の視点からしたら
『もう歳なのに、どうして元気でいなくちゃいけないんだろう?』
『どうせ、あとは死ぬだけなのに、どうしてやりたくもない体操や歌なんか歌って(つまり、レクリエーションをして)きつい思いをしなくちゃいけないのか?』
『もう、放っておいてほしい』
高齢者と接していると、こういった本音をよく耳にします
その上で、私が考える高齢者レクリエーションの意義や意味を、以下に書いていきたいと思います
この記事は、
主に、高齢者介護に関わっているけれど
どうして本人たちがやりたくもないレクリエーションをしなければいけないのか?
レクリエーションを考えるのは正直めんどくさい
レクリエーションの意味が分からない
こう感じている方を対象にしています
が、実を言えば、これは広くいろんな方に知っていただきたいことでもあります
何故なら、レクリエーションとはいわゆる、人生の意味を探る営みだからです
このことについて、これから説明していきたいと思います
【目次】
QOLを向上すると、人生に意味が見えてくる
上記した高齢者レクリエーションの目的に「QOLの向上」というものがあります
このQOLとは、そもそも何でしょうか?
QOLとは、「Quality of life(生活の質)」という意味です
以下に、WHOが1994年にしたQOLの定義の翻訳を引用します
WHOは、QOLを「個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準または関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。1
思いっきり砕いて言えば、
「その人がどの程度、自分の生活に幸せを感じているか?」
となります
つまり、高齢者レクリエーションの目的であるQOLの向上とは、
「生活の中で感じる幸福度を高める」
となります
私達が趣味や仕事にのめり込むのは、気持ちがいいから
でも、ちょっと待ってください
このQOLは高齢者だけでなく、私たちにとっても大事なキーワードではないでしょうか?
私たちは、日々の生活の中で幸福を追い求めています
より具体的に言うと、自分たちが気持ちいいと感じることを求めているのです
趣味、仕事、ボランティア、自己啓発などなど
それらにのめりこむのは、気持ちよさのためです
まさか、わざと苦痛なことをする人はいないと思います
もちろん、一時的に苦痛を感じる必要はあるかもしれません
例えば、資格試験のために好きでもない勉強をするなどですが、
これも、結果的に資格を取って、より有利な仕事を得るという気持ちよさのためです
つまり、気持ちよさを求めることで私たちはQOLを向上させようとするわけです
気持ちよさを追い求めると、その過程で関連した能力が上がる
また、QOLを向上させることで、私たちはそれに関連した能力も向上させます
例えば、絵を描くことを趣味や生業にしている方は
絵を描くという快楽を求めることで、優れた絵画についての知識や技術、道具の良し悪しなどを習得していきます
本を書く人は、文章術や構成についての知識や技術を学び、
DIYが趣味の人は、工作や組み立て方の技術を身につけます
別に、意図してそういう技術を身につけようとしたのではなく、結果的にそうなるのです
本道はQOLの向上なので、これはオマケのようなものでしょう
能力が上がると、そこに意味を見出しやすい
ですが、このオマケが馬鹿にならず
能力の向上を自覚すると、私たちはこのように考えます
「あれ、もしかして、僕って才能あるんじゃないかな?」
とか、
「私は、これをするために生まれてきたんだ」
とか、
挙句には、こう考える人もいます
「自分の生きる意味、人生の意味はここにあったんだ」
と
高齢者レクリエーションとは、高齢者に意味を見出してもらう活動
高齢者レクリエーションに話を戻しましょう
大げさに言えば、
私たちがレクリエーションを提供するのは、高齢者にこのような人生の意味を感じてもらうためです
ですが、私たちが行うことは些細なことで良いのです
一番最初に書いたような、
好きでもない体操や歌や塗り絵や風船バレーを行う場を提供するのです
そして、そこに価値を見出してくれる人にはそのまま続けてもらい、
価値を見出せない人には別のものを提供するように努力するのです
極端に言えば、内容は何でもいいのです
人によっては、先達として私たちに教えたり、話をすることに意味を見出すかもしれません
そんな時は、その人のお話をありがたく聴くだけでも良いのです
大事なのは、場を提供するということです
より多くの種類の機会を与えることです
大雑把に言えば、レクリエーションとはコミュニケーションの一部に過ぎないのです
コミュニケーションを深めることで
彼らにどんなレクリエーションを提供するべきか
自然に見えてくることもあるでしょう
そうやって繰り返していくうちに、私達介護士も、その活動にのめり込んでいくかもしれません
「こんなレクリエーションを提供したら、喜んでもらえた」
「このレクリエーションは上手くいかなかったけれど、こっちはどうだろうか? 試してみたい」
「もっと他に方法はないだろうか? 調べてみたい」
そう思えれば、しめたものです
その人は介護士というお仕事でQOLを向上させているわけです
つまり、やりがいを感じているわけですね
この記事を読んだ人が、そう感じていただければ、それは望外の極みです
まとめ
まとめると、
1.高齢者レクリエーションはQOLを向上させることが目的である
2.QOLの向上とは「生活の中で感じる幸福を高めること」である
3.QOLの向上は私たち自身にも深く関わりがあり、趣味や仕事で追及すれば関連した能力も向上し、人生の意味を見出すこともできる
4.高齢者レクリエーションとは、高齢者が能力を向上したり、人生に意味を見出すための場や機会をより多く提供することである
となります
レクリエーションに意味が見いだせない方、
どうしてもやる気を出せない方が
この記事を読むことで、やりがいをもって介護の仕事に取り組めるようになれれば幸いです